随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

人生の道しるべ

原 阿佐緒 その六(湯浅先生)病む母にしばしばはよらず夕さりし門辺に吾子が吹くラッパはも 原 阿佐緒 前にかかげた歌の場合と同じように、母は子を思い、子はその幼な心のうちにも母をいたわっている感じが切実に味わえると思います。甘えて母に寄りつきた…

人生の道しるべ

原 阿佐緒 その五(湯浅先生)馬を見に行かなとせがむ児を抱き朝春寒むに霜をふみてし 原 阿佐緒 この歌は、阿佐緒の第二歌集「白木槿」(しろむくげ)にあるもので、朝はまだそぞろに肌寒さをおぼえる早春のころのある日、突然にお馬が見たいといい出した子…

今日の一首

日の落ちて雲のまわりのほんのりと色づいている薄明の空

人生の道しるべ

原 阿佐緒 その四(湯浅先生)わが病めば子のおとなしくなるなども寂しやあはれ相たよる身は 原 阿佐緒 かりそめの病床についたときにも、このようにうたって、親ひとり子ひとりのかなしさを訴えています。しかもそのなかには、わが子のしおらしさをいとしむ…

人生の道しるべ

原 阿佐緒 その三(湯浅先生)路人を別れし親に似しといふ子を伴れてかなし春の大路も 原 阿佐緒 阿佐緒は結婚関係において不遇だったといいましょうか、二度の離婚を経験しています。そのいずれにも男子を得ていますが、父親を離れて育つわが子への愛情を、…

人生の道しるべ

原 阿佐緒 その二(湯浅先生)土埃(ほこり)あがる春のちまたをくれなゐの帽子を被りゆく子供見ゆ この歌は、子どもに対する気持ちを単純化してうたったもので、阿佐緒がアララギに移った初期の作品ですが、赤彦もさすがにくろうとの歌だといってほめたとの…

人生の道しるべ

原 阿佐緒(湯浅先生の鑑賞)馬を見に行かなとせがむ児を抱き朝春寒むに霜をふみてし 原 阿佐緒 阿佐緒は十六歳のころ美術学校にはいり日本画を学びましたが、二十一歳の時の一首の投稿歌が選者である与謝野晶子の眼にとまり、それより新詩社にはいって晶子…

人生の道しるべ

橋田東声 その二(湯浅先生の鑑賞)遠くにて鴉なきしが冬の日のはや暮れ落ちて音ひとつせぬ 橋田東声 この歌の概略を述べてみましょう。 ひそまりかえっている御陵の山の、どこか遠いところでからすの鳴く声がした。それも数かさねて鳴いたのではない。一声…

人生の道しるべ

橋田東声 (湯浅先生)谷かげの参道いまは黄昏れて御陵守(みささぎもり)は山をくだれり 橋田東声 東声は四十五歳で世を閉じているのです。たいそう若くてなくなったわけですが、肉親の縁にも薄い生涯で、彼としては傷心の生活が続いていたのです。 歌のだ…

今日の一首

並木なすいちょうのもみじだいぶ散り積もりしものを踏みしめてゆく

人生の道しるべ

どういう感じであったか(湯浅先生)どういう感じであったか、それは、たとえば、もし明るい感じであった場合はそうした感じが出るような句法を、暗い感じや寂しい感じの場合にはそうした感じが出てくるような句法を、切迫した感じの時にはそうした感じの出…

人生の道しるべ

感動したのは何が故であるか(湯浅先生)桜の花枝が風に揺れていても、ただそれだけでは特別に感動するというまでにはならないに違いありません。桜の花枝が風に揺れているという姿の中のどこかに、自分をして歌を詠みたという感動を起こさせるよさがあった…

人生の道しるべ

ありのままの姿はどうであるか(湯浅先生)ありのままの姿と言いましても、それは感動を起こさせた素材のみについて言うことであって、例えば叙景歌などの場合において、咲いた桜の枝が風吹くごとにたわわに揺れている姿に感じた美しさを歌にしようとする時に…

人生の道しるべ

芸術家はかくありたいもの(教祖のお言葉)私は、絵は素人ではありますが、ピカソを見ていますと、なるほど彼は、悪戦苦闘というか、年がら年中あえいでいるようにも見えますが、あれでいいのです。 いつも自分に満足していない。 まだまだ、まだまだ、と思…

人生の道しるべ

教祖のお教え その二うぬぼれないで「神さまありがとうございます」という、このつつましい境地は、次に己れが進歩発展する態勢にあることとなるのです。 すなわち、「やっとできたが、これでいいかしら」という恐れ心というか、ふるえ心というか、うまくで…

人生の道しるべ

上野夕穂 湯浅先生の鑑賞 その二「飛ぶ鳥の消えたる」というのは、それは、こころの中にはまだ「飛ぶ」鳥がはっきりと影像を持ち、動きが感じられている瞬間の気持ちを伝えております。しかし、実際には、鳥の姿は視野から消えてしまったのです。その瞬間、…

今日の一首

並木なすいちょうのもみじ散るものと残るものとで道の明るし

人生の道しるべ

上野夕穂 湯浅先生の鑑賞 その一じっとして、しばらくの間、時間に心をひたらせていた作者の心のなか味が、そこにころがされた玉のようにはっきりと受け取られる歌だと思います。あまり高くもなく飛んでいた鳥ーーーはじめはある程度の高さで飛んでいたかも…

人生の道しるべ

上野夕穂 僕なりの鑑賞飛ぶ鳥の消えたる沖は蔭もちて片面光れる夕の波のみ 飛んで行った鳥が沖へ消えてしまったほどの夕暮れどきなんですねえ。 日の落ちかけた西日に照らされている波には陰ができていて、片面が光っているだけという静かな情景でしょうか。

人生の道しるべ

木下利玄 湯浅先生の鑑賞 その三見透しの田舎料理屋昼しづか桃咲く庭に番傘を干す 木下利玄 近頃はこのような田舎風景の見られることも少なくなったようですが、これはある往還筋に向いている田園の中の一軒の料理屋の様子にちがいありません。天気の好い日…

人生の道しるべ

木下利玄 湯浅先生の鑑賞 その二物かげに怖ち”し目高のにげさまにささ濁りする春の水哉 木下利玄 この歌では、その初句が「物かげに」というところから始まっています。その物かげというのは、人の影なのか、さしているパラソルなのか、あるいはあたりを飛ん…

人生の道しるべ

木下利玄 湯浅先生の鑑賞 その一物かげに怖ち”し目高のにげさまにささ濁りする春の水哉 木下利玄 有名な歌です。私も少年の頃この歌を知って、好きだったからいっぺんでおぼえてしまいました。そしてこの人の歌集をひきつけられるように読んだりしました。春…

人生の道しるべ

木下利玄 僕なりの鑑賞物かげに怖ち”し目高のにげさまにささ濁りする春の水哉 見透しの田舎料理屋昼しづか桃咲く庭に番傘を干す 木下利玄 メダカが素早く逃げるとき、底の泥を少し巻き上げるのは、もう田植えの終わった田んぼなのかもしれませんね。 きっと…

今日の一首

窓の外に朝から雨が降っているしとしとしととしとしとしとと

人生の道しるべ

僕なりの鑑賞 その二風荒ぶ琵琶の湖面はるけくも波の騒立つ見えて続けり 散りたまる乙女椿の花びらをそのまま林泉の石はしづもる 梅の香の淀むと匂ふみ園生は池面も石もただにひそけく たたずまひなべて静けき林泉庭に一樹の梅が香をただよはす 咲ききはる辛…

人生の道しるべ

僕なりの鑑賞 その一鳴きいでし雲雀の声の短くて次には鳴かず日和ひそけき 水際にささ鳴きかはし遊びゐし千鳥飛び去りて干潟ひそまる 谷向けて重なり深き繫みよりま白く現れて滝の流ろふ 夕暮れし闇に紛れつつコスモスの群落つづく遠き森まで 熔岩原に群れ立…

人生の道しるべ

歌集「山水」湯浅竜起著より抜粋 つづき風荒ぶ琵琶の湖面はるけくも波の騒立つ見えて続けり 散りたまる乙女椿の花びらをそのまま林泉の石はしづもる 梅の香の淀むと匂ふみ園生は池面も石もただにひそけく たたずまひなべて静けき林泉庭に一樹の梅が香をただ…

人生の道しるべ

歌集「山水」湯浅竜起著より抜粋鳴きいでし雲雀の声の短くて次には鳴かず日和ひそけき 水際にささ鳴きかはし遊びゐし千鳥飛び去りて干潟ひそまる 谷向けて重なり深き繫みよりま白く現れて滝の流ろふ 夕暮れし闇に紛れつつコスモスの群落つづく遠き森まで 熔…

人生の道しるべ

湯浅竜起先生のお歌川床の石冴え冴えし纏き走る瀬川の水は白くたぎちて 海峡をおしくだる潮せめぎ合い高波となり走る早しも コスモスの大群落の夕闇に仄けく浮きて花は揺れつつ 瀬の音の続く谷間の静けさに川下遠く河鹿鳴くなり 石狩の砂の河原に風寒し風紋…

人生の道しるべ

歌ごころ 先生のお話し また続き白々し、という言葉について申しますならば、しらじらし、と読む場合と、しろじろし、と発音する場合とで、その気持ちや意味がよほど違ってまいります。 落潮になりたるらしも青海のなかに白々瀬の見えそめつ 例えばこの歌の…