原 阿佐緒 その三(湯浅先生)
路人を別れし親に似しといふ子を伴れてかなし春の大路も
原 阿佐緒
阿佐緒は結婚関係において不遇だったといいましょうか、二度の離婚を経験しています。そのいずれにも男子を得ていますが、父親を離れて育つわが子への愛情を、切実に短歌に表現したものが数多く見られます。
この歌は、春のはなやいだ雰囲気にもかかわらず、子どもが「あの人、おとうさんに似ているね」といって母親に語りかけるときの、夫と別れた自分の複雑な気持ちや、子どもに対するふびんの感情を端的に表していると思います。