随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

沁み入る味わい(湯浅竜起先生)
山道にかかればここは墓所にて疎林に雨のくだるしづけさ

 

井のほとり片葉の葦が素枯れゐてただしらじらと雨降れりけり

                      市山盛雄

 

作者の第二歌集(年代的には第三歌集にあたる)「雲淵」に載っている歌です。

一読して心のしずかななつかしさを感じさせる、それでいてどこかに哀愁めいた淋しさをただよわせるような内容のしらべを包んでいることが思われます。

作者は人情にあつい、おだやかな人柄の方であろうことが偲ばれる歌です。

一首目二首目とも、昭和十二年の作で、「真間にて」と標題のついた歌です。作者は、人生の前半を朝鮮半島ですごしましたが、この歌のできる頃は、千葉県の野田市の醬油会社に勤めていました。真間というのも、万葉集で有名な真間の手児奈の古跡のことと思われます。ある日、作者がそこをたずねて行ったときの歌でしょう。

つづく。