随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

歌話つれづれ(梶原治郎先生)
作歌はひとつの自己表現のカタチですから、そのことについて改めて考えてみますと、表現のひとつ「言う」は、こちらの胸の中にあることを言葉にして「出す」ことで自己表現の大切な手段なのですが、その前にもっと大事なことがあります。それは「入れる」ということです。一首の歌ができるのは、感動を五七五七七の形にすることなのですが、その前にそもそも感動が作者の内に生まれていなければなりません。物事に出会って心を動かすからその心を表したい思いになるのです。ですから感動する能力が豊かな分だけ豊かな表現の可能性は広がるのは道理です。何も感じなかったらお礼の言葉を申し上げることはできませんし、少ししか感じなかったならそれなりの表現になるしかありません。対象に触れてどれだけ深く感じたかでそこに表わされる表現も違ってきます。直接見聞きできるものだけしか感じることのできない人は、見聞きしたものをそのままなぞるしかありませんが、直接見聞きする以外のところまで深く感じることのできる人は、鋭い感性で優れた作品を残しています。

つづく。