随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

助詞の用法(湯浅竜起先生)
帰りきし室に妻居ず花瓶に生けかえられて赤き花あり

                 槻下 修作

 

この歌では第四句の「て」という助詞を問題にします。生けかえられし赤き花あり、でも意味は十分通るのです。ところが、生けかえられし、という表し方にせず、生けかえられて、とするところに歌の生命はあるのであります。「し」としますと、それは赤き花の説明句にしか過ぎない。しかし、「て」とされて初めて生けかえられておったという気分、妻の心遣いや、そこにいない妻の心ばせにまで作者の感情が動いているところさえも表現し得ています。この歌は「て」という助詞一字で生きている歌であります。