こまやかな鑑賞 その三
打ち合ふや枝の光のきらきらと晴れゐて空の氷る木がらし
この歌は、情景としては動きの多いものですが、全体を読んでみての感じとしては、作者の心は静かにある雰囲気にひたっていることが汲みとれると思います。それは、この歌だけでなく、歌集のすぐ次に載せてある歌、
この森の夕日のなかに大屋根の静けさありて木がらしの音
などにも表れていると感じます。
こういう落ち着いた感じは、あるいは作者の風格の表れであろうかとも思うのです。ご参考までに数首、同じ歌集の中の歌を掲げてみましょう。
西風ふけば木の葉の降りのはらはらとこぼれて枝の寒き星屑
かたまれる氷雲のへりの際ほそくあかねに焼けて霰ふるなり
木がらしにこのもかのもの山際は曙しろくふき晴れにけり
この作者の歌からは、静かに美しく、こまやかでしかも落ち着いた感じを受けるように思われます。そして、歌の上の言葉の扱い方にも、少なからず学ぶべきものがあると思います。
以上が先生の鑑賞なされたところとなります。いかがでしょうか、これほどの鑑賞をしてみたいものですね。