随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

こまやかな鑑賞 その二
打ち合ふや枝の光のきらきらと晴れゐて空の氷る木がらし

                      太田水穂

 

この歌は、言葉の扱い方や、言葉と言葉の斡旋の具合に、いろいろ学ぶところがあるようです。まずはじめに、いきなり「打ち合ふや」と言っています。枝の具合から言い出したわけですが、(そして、私たちの視覚は、静止している物が動くときにそれを心象に植えつけはじめることが多いと思いますが)その動きを、打ち合ふやと表現して、すぐにそれが木の枝であることが分かるように、続けて「枝の」と言っています。それにその枝の様子がさらに流動してゆくさまを言いおろして、「枝の光のきらきらと」と間をおかぬ表現の形をとっているのですが、そのしらべの呼吸は見事なものだと思います。さらに、「きらきらと晴れゐて空の」という、その飛躍した言い方は、言葉そのものこそ飛躍しているとは言えると思いますが、内容的なしらべは、全く感覚的な自然さを持っていることに感心させられます。そして、そういう裸木の枝が晴れ空に光る美しい情景をもって、全体的には空も氷るような木がらしの感触を言い表しているのですが、木がらしという大切な言葉を、結句名詞止めに使ってそれが突然でない感じは、初句から二句にかけての、打ち合ふや枝の・・・・・というところで充分に出されていると思うのです。

 

先生の鑑賞は、まだまだ続きますので、この続きは次回まわしとさせて頂きます。