随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

描写・写生 その二
青山峡下りくる川のここにして見やれば長く傾きて来る

             ーー宇治川の米炊にてーー

 

この広き山川の水ことごとく白波となりてかがやき流る

 

青き瀬はここに真白き波となり這ひあがり行くその青き瀬を

 

青き水脈くだけて白しその砕け流れはゆかず盛りあがりさわぐ

                        窪田空穂

 

ここに、と表してあるのは、その短い言葉の中に、そうした作者の心の中ーーーその情景に深くはいって行っている心の奥までが、充分に籠められているように思います。そして、「這いあがり行く」という表現が、白波の姿を、何と的確に描写したものかと感心させられた言葉なのです。しかも、第一句の青き瀬、を受けて、「その青き瀬を」と結句にしっかり、白波の動きをつかまえています。落ちたぎっている瀬の騒ぎ、その瀬の白波の動き、そうしたものを、ここまであざやかに、今、目の前に見えるように描き出した作歌の在り方というものに、私は心の目を洗われるように感じたものです。凝視の的確さから生まれる表現の美しさに打たれるのです。連作第一首目の歌を見ても分かるように、宇治川が長く傾いて流れてくる、その青いまでの豊かな水量にも心を奪われたに相違ないと思いますが、この歌では感動の中心に焦点を合わせて、直接「青き瀬は」というところから言いおろしてあります。不用をはぶき入用をのこさず、という作歌の道について、教えられるところがあると思います。

このように先生は味わっておられたんですねえ。とても真似のできるところではありませんが・・・・・。