随想の細道

日常の感動を感ずるままに綴っています。よろしければ、ご覧ください。

人生の道しるべ

歌話つれづれ その二(梶原治郎先生)
少し古くなりますが、昭和の初めの頃に若くして亡くなった梶井基次郎という作家の短編に「桜の樹の下には」という作品があります。普通一般には、桜が満開になればその下に集まって酒盛りでもと思うところですが、感性鋭い切り口をもつ彼は、満開の桜の花の下には死体がいっぱい埋まっている、という思いがけない発想でこの作品を書いています。寒い間は枯れ枝をツンツン冬雲に突き刺していた桜がにわかに花芽をほぐし、ほつほつと花を点しはじめて瞬く間に白々と咲き満ちるのです。彼でなくとも何か異様なものを包んでいるような花なのだという気配は感じないでもありませんが・・・・・。誰が見てもそれはそのように見える、という表層の姿以外のどういうところに何をどう感じるか、ということがとても大事なのだと思います。感じる力、感動の能力の度合いが、個性豊かな作品を生み出すのだと思います。

つづく。